「タレント弁護士」と呼ばれる人々

     テレビに出演する弁護士の姿は、この10年くらいで大きく変わりました。なんといっても、一番の変化は「タレント」という枠で、弁護士が登場することが多くなったことです。

     バラエティに、クイズ番組にラフな格好で出演している弁護士たちは、番組の途中からみた視聴者に、予備知識がない限り、まず本職をさとられないでしょう。弁護士らしい法律的な話を一言でもいうシーンがあるかと最後まで見ていても、そのまま終わってしまう場合も多くなりましたし、もはや出演者も司会者もその弁護士にそうしたテーマをふることさえない場合もあります。

     もはやお茶の間でみている大衆も、また番組の製作者も、弁護士をしている「タレント」という理解なのでしょう。「タレント弁護士」という言い方も耳にするようになりました。これ以前に、一般的になっている言い方に「タレント議員」というのがありますが、よく見るとこの二つの用法は違います。

     「タレント議員」の方は、基本的にタレントとして活動していた人間が、その知名度を利用して議員に転身した場合に使われるのがほとんどです。一方、「タレント弁護士」は、タレントをしていた人間が弁護士になったわけではなく、もともと弁護士をしていた人のタレント兼業。従って、どちらかというと利用しているのは弁護士の肩書なので、前者の用法に従えば、「弁護士タレント」ということになるはずであり、実態もまた、そちらに近い気がします。

     それこそ、一時代前までテレビに登場する弁護士は、「いかにも」という人々ばかりでした。メガネをかけて、ちょっと小難しい顔をした背広姿の堅物そうなおじさん。言っては何ですが、おしゃれな感じではありませんでしたし、また、女性の弁護士をお見かけすることもほとんどなかったといっていいでしょう。

     ある意味、野暮ったい感じは、法律を勉強し、難関の試験に合格した人間は、およそおしゃれなどには気を使うようなタイプではない、という大衆の固定イメージにぴったりとあてはまっていたのかもしれません。

     もちろん出演している目的も完全に法律的なご意見番。クイズ形式で法律的な解答を引き出すような番組でも、弁護士がコメントするシーンでは、くだけた番組の雰囲気もそこだけ一瞬、はりつめるシーンもあったりしたものでした。もちろん、今でもそうした「役」で登場されている方もいますし、法律指南役ながらタレント性も加味した、いわば「笑い」もとれる存在になっている方もいます。そういう意味では、タレント化の濃淡はさまざまですが、作る側としての使いやすさから、それなりのポジションを確立している感じはします。

     つまり、あくまで「タレント弁護士」は、メディアがその意向に沿って作り出したツールという面が強い存在です。

     「タレント弁護士」に対する同業者のとらえ方は、さまざまです。以前はもちろんのこと、今でもこうした存在に冷やかな視線を向けている弁護士は沢山います。「弁護士は弁護士の仕事をすべきだ」という人もいますし、「品位」云々を口にする人もいます。

     一方、肯定・擁護派は、表現こそ違え、「市民に親しまれる存在」とか「身近な存在」といった方向でのプラス効果をいうように聞こえます。テレビに登場する人が身近かなイメージかということはさておき、とっつきにくい人々ばかりではないというイメージづくりとしては、ある意味、法律指南なき「タレント弁護士」にも、弁護士としての別の職業的役割が担わされていることになるのかもしれません。

     ここで今、「タレント弁護士」が良いだの悪いだのいうつもりはありません。弁護士のテレビの露出度は、「オウム事件」以降、高まったといわています。テレビに限って言えば、今の傾向が生まれる背景には、そもそも大衆と弁護士の距離感の異変があったとの見方もできます。

     ただ、気になることを二つ。一つは、タレント性が高まるほどに、弁護士という職名がアピールするものも、どんどん希薄化しているような気がすること。「弁護士議員」といわれている人たちの中の「弁護士」性が希薄化しているという例もあるにはあります。これはまた回を改めて書きます。

     そして、もう一つは、こういう形で作られていく弁護士の親しみやすさというものがあるのだとすれば、果たしてそれが社会の中で、本当の意味で頼れる「プロの存在感」とともに、市民の中に育まれていくのかどうか、ということです。

     もっとも中には、「俺はたまたま弁護士をやっているだけだ」とおっしゃる方もいるかもしれません。ただ、言うまでもなく、そうだとしたならば、「タレント」にしても「議員」にしても「弁護士」という肩書を付記する以上、最低でもそのイメージダウンにつながることだけは気をつけなければなりません。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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