FC2ブログ

    「魅力」「やりがい」発信が映し出す本当の現実

     志望者減という状況のなかで、いまだに弁護士の魅力ややりがいをもっと発信せよ、という論調に出会います。最近も、「魅力ある法曹を取り戻そう」と題された5月1日付けの日本経済新聞の社説が、政府と弁護士会にその積極的な発信を求めていました。しかし、弁護士会外だけでなく、会内の主導層のなかからも、依然こうした論調は聞かれます。

     仕事の魅力や、やりがいを積極的に打ち出すことが悪いわけない、とか、現にそれは事実として存在しているという人も、弁護士のなかにはいると思います。ただ、その一方で、このテーマで話した複数の弁護士たちは、異口同音にこう言いました。「私は弁護士の仕事の魅力を知っている。でも、いまや勧められない」と。息子がやりたい、といっても、勧めることはない、とはっきり言った人もいました。

     それを聞いて、いつも率直に思うのは、実際に弁護士の仕事の魅力を分かっていても、今、そして、これからのこの仕事は勧められない、さらに、自分がいま志望者ならば、たとえ、その現実的な魅力を分かっていたとしても選択していないかもしれない、という正直な気持ちが彼らのなかにあるということです。それは別の言い方をすれば、その魅力とかやりがいが、この仕事の経済的な安定度や将来性、さらにいえば、弁護士になるまでの自分たちの時代はなかったような制度的負担の現実を乗り越えてまで来い、という理由にはさすがにできない、という実感なのだと思えるのです。

     魅力ややりがいの発信が、あるいは志望者の獲得につながるのではないか、という思考は、どういいわけしても志望者たちの無理解を前提にするものです。彼らがまだ知らないだけで、この仕事は、もっと沢山の可能性や魅力にあふれているのだ、その理解が進めば道は開ける、と。そういう志望者がいないとは、もちろんいえません。そこまで魅力があるならば、前記した現実をすべて乗り越えても挑戦しよう、という勇者もいるかもしれません。

     ただ、一方で前記したように弁護士の本音、つまりこの世界から離れる「志望者」たちの無理解どころか、むしろそれは正解であって、自分でもそうするだろうという見方があることを知るほどに、会外はともかく、会内の「改革」肯定派の魅力発信姿勢には、その点だけでも、やはり、効果以前に割り切れないものを感じてしまうのです。

     前記日経論調を含め、この発信の効果については、既にいくつかの弁護士ブログも取り上げていますが(「弁護士坂野真一のブログ」「Schulze BLOG」)、これまでも書いてきたように、志望者離れは、あくまで彼らの弁護士と法曹養成の現状をにらんだ「価値」判断、つまり「価値」を見出せないという、動かし難い判断に基づくものです。魅力とかやりがいの「価値」をいくら大きく見積もったところで、何が彼らの現実的判断につながっているのかを直視しなければ、その効果が期待できるわけもありません(「志望者にとっての『価値』と『改革』の『価値』」)。

     弁護士会が今、こうした魅力ややりがいを発信しようとする姿勢は、志望者の目にはどう映るのでしょうか。その内容自体に嘘はなかったとしても、本当に自分たちが求めている「価値」、今、自分たちがこの世界を選べない理由を直視しない姿勢には、自分たちとは隔絶した、およそよそよそしい「改革」推進者側の理由を見出してもおかしくない。それは発信者側の期待に反して、逆に無責任とか、無力という言葉が被せられかねない、新たなこの世界への失望を生むものになるかもしれません(「弁護士の『魅力』発信を求める真意」)。

     そのことに弁護士会主導層が気付いていないにしても、また、気付いていたうえで「改革」を守るためにこういう姿勢しかないと判断しているにしても、前記「日経」論調に、そのままうなずいてしまいそうな彼らの姿勢こそ、どうにもできない「改革」の現実そのものように思えてなりません。


    成立した取り調べの録音・録画を一部義務付ける刑事司法改革関連法についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/7138

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事

       スポンサーリンク



    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR