生まれるはずがない合格率「格差」の原因

     予備試験組が参加した新司法試験の結果が出て以来、大マスコミなどの論調を見ていて、不思議に思っていたことがあります。それは、予備試験が法科大学院修了者と同等の「学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養」を有するかどうかを判定することを目的としている(司法試験法5条1項)ことと、今回の結果の関連が、意識的に触れられていないような印象を持ってしまうからです。

     既に、結果は書きましたように、予備試験組の司法試験合格率は68.2%であるのに対し、法科大学院修了者については24.6%。前記の同等の能力を判定するとした規定との関連で、この歴然たる格差をどうみるかということです(「『予備試験組』合格者の現実」 「『予備試験』をめぐる嫌な予感」)。いうまでもないことですが、前記目的通りならば、受験生のレベルは、予備試験組も法科大学院修了者も異ならないはずなので、両者の司法試験合格率は同程度にならなければなりません。この原因を真正面から突っ込んでいるものが、ほとんど見当たらないのです。

     2007年閣議決定の「規制改革推進のための3 か年計画」で、既に「予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させる」という方向が打ち出されていることから、予備試験組の母数を増やす、つまり同試験の合格者を増やす措置が、次回とられるのではないか、との見通しは言われています。ただ、そういう形で調整する以前に、この原因が何なのかという話があっていいはずですし、そもそもそういう形で調整して一件落着する話なのかという点もよく分かりません。

     そう思っていたところ、坂野真一弁護士が自身のブログで、ストレートにこの点を取り上げました。坂野弁護士は、裏を返せば、予備試験は、あくまで法科大学院修了レベルの学識等があることを判定する試験だから、予備試験を実施する法務省が考えている法科大学院修了レベルが、予備試験合格者レベルにならなければおかしい、だが現実には、予備試験ルートの司法試験合格率を上回る合格率を出した法科大学院はただの一校もなかった(法科大学院別トップの一橋大が57%)、としたうえで、少なくとも原因として考えられる可能性があるものとして、次の2点を挙げました。

      「法科大学院が、しっかり教育を実施し厳格な卒業認定をするという制度理念に反して、法務省の考える法科大学院卒業レベル(=予備試験合格者レベル)までの学識等が身についていない学生を安易に修了認定して卒業させている可能性(つまり、うなぎ屋の看板を出して金を取っておきながら、そのうなぎ屋はウナギすらさばけない店だった)」
      「予備試験に関して、法科大学院卒業レベルで合格させるという法律の明文を曲げて、敢えて、法科大学院卒業レベル+αの実力者しか合格させていない可能性(その、とんでもない、うなぎ屋を守るために、これ以上のうなぎ屋の開店を許さない)」

     要するに、こういうことにしかならないように思います。前者が法科大学院制度の現実そのものの問題、後者はその法科大学院制度を守るための予備試験冷遇策の問題とくくれます。坂野弁護士は、「いずれも許されて良いことではないが、どちらの弊害が大きいかといえば明らかに前者だ。法曹全体の質の低下をもたらすからだ」と指摘しています。

     このおかしさに、大マスコミが気が付いていないわけがありません。なぜ、ここを突っ込まないのでしょうか。突っ込めば、この現実があからさまになり、傷つく対象が存在するからであり、一方で、このおかしさを社会に喚起しないためであることは、容易に想像できます。法科大学院の理念の正しさを言い、「改革」路線を突っ走る側にとっての、これも不都合な真実であるように思えてなりません。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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