不祥事と「失われた環境」

     神奈川県警の30歳代の4人の男性警察官が、後輩の20歳代の女性警察官に対して、服を脱ぐことを強要したり、無理やりキスをしたりするなどの集団で行ったとされる性的いやがらせ。当初、「立件できない」とした県警は、一転、「立件の可否を判断する」ことにとりあえず変更しましたが、どうみても世論の風当たりに、仕方がなくととれてしまう、この対応は、不祥事に対する姿勢としては、およそ最悪のものといってもいいかもしれません。

     神奈川県警では不祥事が続いています。2011年46歳の男性警部補が、署内の女子更衣室や女子トイレなどに侵入し、盗撮として書類送検。今年に入っても34歳の男性巡査が、架空の自転車盗事件をでっち上げ、友人を被疑者に仕立てて検挙したとの調書を作成したとして虚偽有印公文書作成・同行使の容疑、31歳の第2機動隊所属の巡査部長が、女子高校生に裸体写真を撮影させ携帯電話のメールで画像を送信させたとして、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反容疑で各逮捕――。

     こうした事態への猛省があっていい時であり、かつ、その意味では、それだけ世間の厳しい目線が集まっていることを十分当局も認識している時であるはずであることを考えれば、なおさら前記対応は信じられないという気持ちなります。

     なぜ、神奈川県警で不祥事が続くのか。今回の事件を取り上げたフジテレビのニュース番組で、キャスターからこの疑問を投げかけられた同テレビ局社会部の平松秀敏デスクは、それへの答えのなかで、こんな話をしていました。

      「わたしは元県警幹部に話を聞いてみたんですが、神奈川というのは、横浜や川崎を抱える都会だと。東京に次ぐ大都会で、必然的に対応される警察官に、地元出身者が少なくなってくる。その結果、人と人とのつながりが希薄に、乏しくなって、先輩・同僚・後輩同士、お互いをチェックする機能が働かなくなって、不祥事が発生しやすい土壌になっているということでした」

     前記最悪の対応を見せつけられているなかで聞く、この不祥事発生原因は、その真偽以前に、およそ世間に通りのいいものではないようにも思えます。ただ、これを聞いて、すぐに思い出したのは、弁護士会です。弁護士会内の不祥事に対しても、以前から、全く同じようなことが言われてきたからです。

     つまり、弁護士会内の、弁護士による不祥事を起こさせないための、チェック機能、相互監視体制です。以前から弁護士の不祥事が、会員数の多い大都市弁護士会に目立つのは、そうした環境が、地方会ほど成立していないからだと言われてみたり、また逆に、大都市会では会派(派閥)の存在が、少なくとも構成員同士での相互監視機能を果たしている、として、その存在意義と結び付けて、会派人から強調されたりしてきました。

     さらには、弁護士自治を内部から支えてきたのは、こうした環境であるというとらえ方もありますし、現在の増員政策によって、地方会を含め、こうした環境がどんどん破壊されてきているという見方もあります(「ある『良心的親弁』スタイルの指南」)。

     この相互監視というとらえ方は、そうした形への実感がある中堅以上の弁護士たちには、わりと広く受け入れられているもののように思えます。ただ、彼らをしても、このとらえ方が、必ずしも通りのいいものだとは思っていません。なぜならば、たとえそうした環境が壊れていても、それでもなんとかしなければいけない、ということになると考えているからです。とりわけ、弁護士自治を背負っている立場からすれば、自浄作用への言い訳ととられることが墓穴を掘ることにつながる、という意識もあるからです。

     ただ、いつも気になるのは、そこから先の話です。こうした相互監視の環境が現実に破壊されても、それでも不祥事を起こさせない、起こさない弁護士・会の手立てとは、一体、いかなるものなのかという根源的な問題です。

     実は、前記フジテレビの番組でも、不祥事の根源的な問題に触れることを、コメンテータである若狭勝弁護士が、こう語っていました。

      「やはり、一番大事なのは『プロ魂』だと思います。2011年の震災のあとに自衛官が、自分の家族がまだ生死不明の時に、一生懸命捜索にあたったという話がありましたよね。ああいう形で、1人の人間として何をすべきかということに、原点に戻って、刑事は刑事としてプロ魂を持ってことにあたることが一番大事だと思います」

     まさに、弁護士についても当てはめられる、この「プロ魂」。しかし、これをどうやって培っていくのか、その答えがなかなか導き出せません。平松デスクは、「もともと警察官というのは、そういう意識の高い人が多いんですが、最近は若い人が増えて、人と人とのつながりが苦手な人が増えると、だんだんプロ意識も薄れていくという現状はよく聞きます」と、ここでもう一度、失われた環境の問題に話を戻しています。

     弁護士を取り巻く環境についても、相互監視体制という意味でも、あるいは「プロ魂」を受け継ぎ、培うプロセスという意味でも、それが失われてきていることは事実です。ほかに有効な手立てを示せないのであれば、たとえ通りの悪い話でも、そこをもう一度見直し、そこに活路を見出す必要もあるように思えます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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