弁護士議員の「弁護士色」

     「いまの政界は弁護士出身が幅を利かせている」

     与党の長老の一人が、そうぼやいている話を、岩見隆夫・毎日新聞客員編集委員が取り上げています(同新聞6月18日朝刊「近聞遠見」)

     岩見氏も指摘するように、「幅を利かせている」といっても、弁護士議員は衆院20人、参院11人の計31人足らず(岩見氏の記事の参院10人、計30人は間違い)で、全議員の4%足らずだが、横路孝弘衆院議長を筆頭に、谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表、福島瑞穂社民党党首、政府関係では、枝野幸男官房長官、細川律夫厚生労働相、仙谷官房副長官等々、要職についている方が多く、要するに目立つところにいる感じはします。

     「理屈を言うだけで、仕掛ける能力もない」

     長老が、「幅を利かせている」弁護士議員にぼやく中身は、このことのようです。つまり弁護士的である彼らの、政治家としての資質を問題視しているようにとれます。

     岩見氏も、その弁護士的であることを、こんな風に分析しています。

     「よく言うと論客、悪く言うと理屈屋、従って行動は鈍くすごみや飛躍がない。落としどころをいつも探ろうとする。政治には、理屈を横に置いて飛ばなければならない時があるが、飛ばない」

     依然、弁護士会館で講演したベテラン弁護士議員が、「議員になりたいのなば、弁護士が板についてしまうまえに」ということを話していたのをご紹介しました(「弁護士議員の存在感」)。根回しがものをいう政界で、弁護士流の公明正大スタイルは、不向きというニュアンスでした。

     見方によっては、長老や岩見氏の分析で出てくる「仕掛ける」とか「理屈を横に置いて飛ぶ」といったことができない弁護士という括り方も、どこか前記ベテラン弁護士の忠告と通じるものがあるようにも思えます。

     ただ、ややこうした分析に違和感を感じるのは、弁護士という観点からみれば、実は弁護士議員は、それほどその出身母体を感じさせる形で政界に存在しているだろうか、いやむしろそれを感じさせないくらい溶け込んでいるようにも思っているからです。

     つまり、選挙の際に、その出身を「弁護士」として語るくらいの話で、およそ言われなければ分からないほど、特別、弁護士色を出している感じはしないのです。もちろん、大衆の受け止め方にしても、「へー弁護士なんだ」くらいの感じだと思います。

     要するに、何が言いたいかと言えば、長老のぼやきにみられるような分析は、実質、後付けの話ではないかということです。理屈っぽく、「飛ばない」政治家を見て、その人の出身を見て、弁護士イメージとかぶせている感もしなくはないのです。

     確かに弁護士が「板についている」方は、理屈っぽいという印象を与えるのかもしれませんが、既に頭を政治家に切り替えていらっしゃる以上、「飛ぶ」という政治的な判断をしないようにはとれません。そこは、むしろ民主党政権が度々自民党と比べて、いわれるように、経験値が左右しているようにも思えるのです。

     むしろ、いみじくも岩見氏が分析した「すごみや飛躍」がまかり通る世界で、「落としどころを探し」、党利や数による専制に対し、「理屈」で対抗するというところにこそ、国民から見て、弁護士が議員になってもらうメリットがあるともいえるわけで、その意味で、悪い意味で「弁護士チック」というよりは、悪い意味で「弁護士チックではない」という気もしてしまうのです。

     ただ、今、政治家として求められているのは、「理屈」よりも「政治的決断」とか「実行力」なのだ、というとらえ方は、社会に広がっているようには思います。その政治への不満が、スポットが当たる政治家の出身である「弁護士」という経歴に、やはり結び付つけられて語られているように見えます。

     それにしても、「弁護士」とは、よくよく良い意味ではなく、悪い意味で例えられる仕事になっている感じがしてしまいます。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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