横浜弁護士会「改称」問題のハードル
相当な理由と覚悟なければ、慣れ親しんでいるものは変えられない。まずは、そんな印象を持ってしまう横浜弁護士会の2001年、2003年に続く3度目の会名変更議案否決。県内の弁護士で組織している団体だから「横浜」でなく、「神奈川県」へ。同じような趣旨の議論を3度やり、いずれも過半数の賛成を得ながら、可決要件の3分の2に達することができませんでした。
「なぜ、横浜弁護士会なんですか」。こんな質問を市民から受けたという話が、横浜市外に事務所を構える弁護士からはよく聞かれます。「先生は厚木弁護士会ですか」と尋ねられたという会員の話もあります。変更論には、県内に別の弁護士会があるというような「市民の誤解のもと」という「実害」が指摘されます。
今回の提案には、会執行部側にも特別な思いがありました。弁護士増員で毎年100名増、会員1300人に膨れた横浜弁護士会が、会員一丸となって生まれ変わろうという提案でした。来年8月には会館もリニューアルさせ、法律相談、中小企業支援、高齢者支援といった業務も拡充、事件受任機会を増やし、若手支援にも――。そんな機運を、「県の弁護士会」をアピールすることともに、盛り上げたいという狙いでした(横浜弁護士会新聞「今、弁護士会は新しいステージへ」) 。
一方、存続論にも強固なものがあります。理由は「伝統がある」「愛着がある」「裁判所と検察庁と同じにすべき」「海外では横浜の方が知名度がある」等々。前記不利益と比してどうかという話になるわけですが、存続論の根底には、こうした理由をなげうってまで、わざわざおカネと手間をかけて変えるほどかという意識が横たわっているように見えます。
こうした存続論を掲げるのは、もちろん一番「実害」が少ないように見える横浜市内の弁護士と考えるのが普通ですが、必ずしも会内の横浜VSその他地域の対決というわけでもありません。「肩身が狭い」。横浜市内に事務所を構える弁護士はそう語りました。そうした不利益を負っている県内の各支部、川崎、県西、横須賀、相模原の同業者に対する思いもあります。慣れ親しんでいる、愛着があるといっても、「実害」をひきずってまで反対することか、裁判所・検察庁との一致のメリットもそれほどあるか、という声も聞こえてきます。
世代間論争でもありません。意外と若手のなかに、改称反対派がいるという話もあります。「横浜の方がカッコイイ」。前記変更理由を掲げられては、不謹慎とも言われても仕方がありませんが、現実的にはいかにもありそうではありますし、案外若手に限らない表明されない反対の有力な根拠のひとつかもしれません。
もちろん、流れは変更にあります。全国の弁護士会で県名一致の改名が進み、不一致会は、いまや横浜、金沢、仙台の三弁護士会だけ。改名実現会でも同様の変更理由をめぐる同様の議論を経ていますが、結局、反対派の「歴史」「伝統」「カッコよさ」の言い分と意識が、いかにもうなずけそうな地名だけが残っているとみることもできなくありません。
もはやいずれ変わることになるとみる横浜弁護士会会員も、少なくないようです。今回変更に1票を投じた、ある会員は、毎年議案に上げてもいいんではないか、と語りました。「どちらでもいいではないか」「こんなことをしている場合か」という意見もあるようですが、これが毎回、激論になる辺りが、ある意味、弁護士会の生真面目さとも面白さとも思えます。
肝心の市民目線はどうなのか。前記するような混乱をいう見方もありますが、いうまでもなく決定的な強い要請があるとはいえません。私も神奈川在住の市民。お前はといわれれば、既に私は仕事柄、愛着が生まれてしまっていることは否定できず、改名した愛知県弁護士会のことを、いまだに「名古屋弁」とかいってしまう人間なので、この件では市民感覚云々を前に、存続派に心情的に共感してしまうのですが、圧倒的にかかわりが薄い多くの市民からすれば、やはり「どちらでもいい」のでしょう。周囲に聞けば、「神奈川県で何が悪いのか分からない」という声もありましたが、県下でもよく聞かれる、「車のナンバープレートは横浜ナンバーがいい」みたいなレベルの論争と勘違いする市民もいました。
一方でただ、県名としたから県民が身近に思ってくれるというのは安直といえても、少なくとも、そこに少しでもやれることはやる姿勢と、そうしたことまでしなければならない弁護士会の現実を県民に伝える意味はあるように思えます。
ただいま、「弁護士自治と弁護士会の強制加入制度」「弁護士会の会費」についてもご意見募集中!
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「なぜ、横浜弁護士会なんですか」。こんな質問を市民から受けたという話が、横浜市外に事務所を構える弁護士からはよく聞かれます。「先生は厚木弁護士会ですか」と尋ねられたという会員の話もあります。変更論には、県内に別の弁護士会があるというような「市民の誤解のもと」という「実害」が指摘されます。
今回の提案には、会執行部側にも特別な思いがありました。弁護士増員で毎年100名増、会員1300人に膨れた横浜弁護士会が、会員一丸となって生まれ変わろうという提案でした。来年8月には会館もリニューアルさせ、法律相談、中小企業支援、高齢者支援といった業務も拡充、事件受任機会を増やし、若手支援にも――。そんな機運を、「県の弁護士会」をアピールすることともに、盛り上げたいという狙いでした(横浜弁護士会新聞「今、弁護士会は新しいステージへ」) 。
一方、存続論にも強固なものがあります。理由は「伝統がある」「愛着がある」「裁判所と検察庁と同じにすべき」「海外では横浜の方が知名度がある」等々。前記不利益と比してどうかという話になるわけですが、存続論の根底には、こうした理由をなげうってまで、わざわざおカネと手間をかけて変えるほどかという意識が横たわっているように見えます。
こうした存続論を掲げるのは、もちろん一番「実害」が少ないように見える横浜市内の弁護士と考えるのが普通ですが、必ずしも会内の横浜VSその他地域の対決というわけでもありません。「肩身が狭い」。横浜市内に事務所を構える弁護士はそう語りました。そうした不利益を負っている県内の各支部、川崎、県西、横須賀、相模原の同業者に対する思いもあります。慣れ親しんでいる、愛着があるといっても、「実害」をひきずってまで反対することか、裁判所・検察庁との一致のメリットもそれほどあるか、という声も聞こえてきます。
世代間論争でもありません。意外と若手のなかに、改称反対派がいるという話もあります。「横浜の方がカッコイイ」。前記変更理由を掲げられては、不謹慎とも言われても仕方がありませんが、現実的にはいかにもありそうではありますし、案外若手に限らない表明されない反対の有力な根拠のひとつかもしれません。
もちろん、流れは変更にあります。全国の弁護士会で県名一致の改名が進み、不一致会は、いまや横浜、金沢、仙台の三弁護士会だけ。改名実現会でも同様の変更理由をめぐる同様の議論を経ていますが、結局、反対派の「歴史」「伝統」「カッコよさ」の言い分と意識が、いかにもうなずけそうな地名だけが残っているとみることもできなくありません。
もはやいずれ変わることになるとみる横浜弁護士会会員も、少なくないようです。今回変更に1票を投じた、ある会員は、毎年議案に上げてもいいんではないか、と語りました。「どちらでもいいではないか」「こんなことをしている場合か」という意見もあるようですが、これが毎回、激論になる辺りが、ある意味、弁護士会の生真面目さとも面白さとも思えます。
肝心の市民目線はどうなのか。前記するような混乱をいう見方もありますが、いうまでもなく決定的な強い要請があるとはいえません。私も神奈川在住の市民。お前はといわれれば、既に私は仕事柄、愛着が生まれてしまっていることは否定できず、改名した愛知県弁護士会のことを、いまだに「名古屋弁」とかいってしまう人間なので、この件では市民感覚云々を前に、存続派に心情的に共感してしまうのですが、圧倒的にかかわりが薄い多くの市民からすれば、やはり「どちらでもいい」のでしょう。周囲に聞けば、「神奈川県で何が悪いのか分からない」という声もありましたが、県下でもよく聞かれる、「車のナンバープレートは横浜ナンバーがいい」みたいなレベルの論争と勘違いする市民もいました。
一方でただ、県名としたから県民が身近に思ってくれるというのは安直といえても、少なくとも、そこに少しでもやれることはやる姿勢と、そうしたことまでしなければならない弁護士会の現実を県民に伝える意味はあるように思えます。
ただいま、「弁護士自治と弁護士会の強制加入制度」「弁護士会の会費」についてもご意見募集中!
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