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    法科大学院制度廃止法案の登場

     法科大学院を中核とする現在の法曹養成制度の根本にメスを入れる、画期的な法案が4月17日、国民民主党と衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」によって衆院に共同提出されました(司法試験法等の一部を改正する等の法律案要綱)。その内容の柱は、概ね次の通りです。

     ① 司法試験の受験資格を法科大学院修了者と司法試験予備試験合格者に限定する制度の廃止
     ② 受験期間制限の廃止
     ③ 予備試験の廃止
     ④ 司法試験の口述試験復活を含む科目変更
     ⑤ 弁護士会・法科大学院が連携した弁護士への研修機会の提供
     ⑥ 司法修習期間の2ヵ月間延長した1年2ヵ月への変更

     資格取得までの時短化による負担軽減で志望者を回復することに主眼が置かれた政府案への対案という位置付けですが、司法試験受験資格要件の廃止に踏み込んでいることからも明らかなように、事実上の法科大学院制度廃止、旧司法試験復活法案といっていい内容です。

     「改革」で生み出された法科大学院の中核という位置付け、役割そのものを見直すという点で、これまでの路線に縛られず、極めて現実的な対策が打ち上げられたという意味では、「遂に」という言葉を付け加えたくなります。しかし、これまでのところ、不可解なほど、この法案に対する、メディアの対応は冷ややかです。

     事実上の第1報となった時事の報道では、口述試験復活と予備試験廃止だけが伝えられ、胆といってもいい受験資格要件廃止が言及されないという、まさに不可解な現象もありました。そのため、業界関係者の中には、既に法科大学院制度擁護派が口にしていた方向で、本道維持のために予備試験に「遂に」メスが入る法案が出てきたと、逆の解釈と懸念が広がる一幕もありました。

     時事の報道に関しては、単なる記者の認識不足という解釈もできますが、他紙の反応を合わせて見ると、制度擁護派からすれば、まさしく「とんでもない内容」の法案を、「非現実的」と片付けたい大マスコミの思惑まで推測したくなる現象です。

     しかし、現実的といえば、現在の「改革」がもたらした法曹養成制度の現状からして、これほど現実的内容はありません。この法案の前提には、「改革」が構築した、前記司法試験の受験資格を法科大学院修了者と予備試験合格者に限定している制度が、法曹志望者減につながり、優れた資質を有する法曹の人材確保につながっていないという認識があります。

     何度も書いてきたように、法曹志望者減の根本原因には、増員政策失敗による弁護士の経済的価値の下落という問題が横たわっています。志望者減対策のために、制度擁護派内からも、なりふりかまわない「背理」との批判が出ている前記政府案の内容を考えれば、法曹養成制度が今、選択すべき選択肢はこれしかない、というべきです(「法科大学院在学中受験『容認』という末期症状」)。

     法案の提出に当たった国民民主党の階猛・衆院議員は同党ホームページで次のように語っています。

     「政府案は何のために法科大学院を作ったのかを見失っている内容ではないか。試験さえ通れば良いという以前の制度から、プロセスで法曹を養成する制度に変えることが法科大学院制度創設の目的であった」
     「しかし、政府案では大学を3年で終わりにし、4年目から法科大学院に行けるようにして最短では法科大学院に1年だけ通えば司法試験を受けられるようにするもの。それでは大学1年から大学受験をすることと変わりなく、4年間の法学部の教育を充実させればよいのであって、法科大学院の自己否定ではないかと思う」
     「法曹養成制度を守ることよりも、法科大学院の入学者を増やして法科大学院を守るということに目的があるとしか思えない、間違った法案であると思う」

     なぜ、この法案が制度擁護派にとって、「とんでもない」ものになってしまうかといえば、それはとりもなおさず、法科大学院関係者の中に制度=修了の司法試験受験要件化という、絶対にこれを手放せないという強い意識と前提が存在しているからにほかなりません。そうだからこそ、こちらもこの法案を事実上の制度廃止法案と呼ばなければならなくなっているわけですが、もはや階議員が指摘するように、本来の目的を見失ってまで、ここにしがみつくというところにまで至っているのが「改革」の現実であるということです(「受験資格化を必要とする理由」)。

     そのしがみつく制度擁護派の本音をさらに深みすれば、これまでも書いてきたように、受験要件という「改革」が与えた特権的な地位を失えば、もはや制度は選択されない、要はそうなったあかつきに選択される「価値」を提供できないという、この制度がずっと引きずっている、ある種の「自信のなさ」をそこに見てしまうのです。階議員の指摘の最後の引用部分は、まさにそこに触れたものにとれます(「法科大学院『本道』をめぐる現状認識と自覚の問題」)。

     法案が今後どういう扱いになっていくかは、もちろん予断を許さない状況ですが、この法案の登場が、まさしく法曹養成の現状と、それを直視して、本当のあるべき法曹養成から逆算した対策を導きだせないところに陥っている、「改革」の現実を浮き彫りにしているといわなければなりません。


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    弁護士需要が顕在化しない「改革」の正体

     弁護士を増やしたものの、「需要が顕在化しなかった(していない)」ということが、いまやこの司法改革の結果として、当たり前のように言われています。マスコミの論調のなかでも、これが弁護士の経済的異変につながっているという文脈で登場しますし、ここまでは業界内でも大方共通認識になっている観かあります。

     しかし、今、改めて奇妙な気持ちさせられるのは、ここから先の、弁護士需要の「顕在化」ということに対する、「改革」推進論のスタンスです。なぜならば、端的に言って、それがいまだにこの部分を、弁護士の増員と増えた弁護士の犠牲的努力でなんとかする、なんとかなるというものにとれるからです。

     もっとも、これまでも書いてきたように、有償性・無償性をごちゃまぜにした「改革」の需要論、それに基づく弁護士必要論の現実を考えれば、増員弁護士を経済的に支えられるほどの需要は、もともとこの国になかった。それが蓋を開けてみたならば分かったというだけで、そもそも顕在化しようがないということで、この話は終わってしまいます。

     ただ、一方で、なにを前提として潜在的な需要として考えるか、という問題は残っているといえます。顕在化しないことが分かったのは、あくまで制度を含めた現在の司法の現実を前提としたものです。もっと弁護士を利用したい、司法を利用したいという社会の欲求に対して、前提的な条件が整えば、弁護士としても、業務として成立する需要としてカウントできるものが生まれるかもしれない、という話です。

     低廉でサービスを受けたい、という社会的欲求に、個々のサービス提供者が応えるのには、もちろん経済的な理由による限界があります。数を増やして、競争させ、提供者の工夫や努力によってしても、それがその社会的欲求の期待を満たせるとは限らず、そもそも業務の成立を脅かすまでして、そこまでそれを満たさなければならない、という話にもなりません。

     なぜか、よく聞かれる例えですが、低額で乗り放題のタクシーを期待する社会的欲求が大量に存在していたとしても、それを「需要」と位置付けて、それに応えるために、あらかじめタクシー運転手と車を大量に増やし、競争による低廉化への努力に丸投げする、という方法がとられる、という話にはなりません。誰の目にも、無謀です。もし、その社会的欲求に、本当に社会としてこたえる形にしようとするならば、その大量の欲求に応えられる受け皿が、経済的に成り立つような別の前提が容易される必要があるはずです。それが用意されて初めて、現実的にサービス提供者がこたえられる「需要」としてカウントできる。

     弁護士需要論と「改革」が陥った根本的な誤りは、そこにあります。弁護士の需要に対して、その顕在化がみられないことが分かった段階から、現在に至るまで、推進論者の中に、その掘り起こしに「開拓」という言葉を当てはめ、増員弁護士を「開拓者」と位置付ける考え方があります。鉱脈に当たらないのは、掘り進める鉱夫が足りないからだ、とばかり、弁護士の数を増やせば、必ずや需要が掘り起こされる、という発想です。そして、増員された数によっても、需要が顕在化しないという「改革」の結果が明らかになった今でも、まだ「改革」はその考えから抜けきっていない。「改革」推進論者のある人は、まだまだ潜在需要はあるから増員は間違っていない、ここで手を緩めてはいけないと言い、また、ある人は、原因は旧態依然とした弁護士の業態と努力不足にあると言っているのです(「増員『需要顕在化』論と『開拓論』継続の意味」 「弁護士「需要」と処遇をめぐる疑問」)。

     実は業界の中にも、本気で弁護士の需要を「顕在化」させるためには、本当は何が検討されるべきなのか、前記した必要な前提について提案する声はあります。例えば、おカネでいえば、法律扶助の充実、資力制限の緩和で、国民が裁判費用を心配しなくていい前提が、司法利用者の間口を広げ、可能性を広げる。そのうえで、弁護士費用は貸与ではなく給付制にして、タイムチャージ制も導入して低額訴訟について、利用者・弁護士双方の可能性を広げる。訴訟救助、破産申立に必要な予納金の国庫仮支弁の拡充、弁護士費用保険の充実なども。さらに、裁判利用の動機付けにかかわることでは、行政訴訟での勝訴率の低さや裁判の拙速化による不満など、裁判所改革が前提となるという声も根強くあります(森山文昭「変貌する法科大学院と弁護士過剰社会」)。

     本当にこの社会に、弁護士の活用によって、何とかしなければならない需要があって、それに本気で向き合うというのであれば、要は弁護士「需要」を本当に顕在化させるというのであれば、「改革」が描いた、弁護士増員とその先の無理な弁護士の努力に期待するよりも、考えなければいけないことがあるはずです。逆にいえば、弁護士増員とその先の「需要」の顕在化に延々と期待する「改革」推進論は、結局、その意味での本気度を疑われてもしかたがありません。そこまでヤル気はないのではないか、と。利用者にとって有り難い未来は、もはやこの「改革」の、どこに期待できるのでしょうか。

     低廉化を含め「利用しやすくなる」という良化のイメージを描き、社会の期待感を煽りながら、弁護士増員を推進し、結果としてその無理が判明してもなお、増員にしがみつく「市民のため」「国民のため」の「改革」が、本当は何を切り捨てているのかは、もはや明らかてあるといわなければなりません。


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    司法試験合格者「自然減」と業界の末期度

     弁護士会内から司法試験合格者数の更なる減員を求める声が出る(「『改革』が見通せていない弁護士の経済的魅力回復」)一方で、もはやこのテーマでの議論は不要とするような意見が、実は会内の「改革」主導層の中だけではなく、それ以外の会員の中から「現実論」のように言われます。その基本的な背景にあるのは、いうまでもなく合格者数の減員が着実に現実化していることです。

     日弁連は2016年3月の臨時総会で、司法試験合格者数をまず早期に年間1500人までに減員することを緊急課題として、その実現に「全国の会員・弁護士会と力を合わせて取り組む」ことを盛り込んだ決議を可決しました。この決議は2015年の合格者1850人という実績の中で可決されたものですが、合格者数は2016年に早くも1583人と1500人台となり、2017年1543人、2018年1525人と下降しています。

     決議にあるように弁護士会が「力を合わせて取り組む」までもなく、合格者は目標の1500人を達成しようとしている。もちろん、会員間には、ここまではあくまで当初目標のはずで、この時点で「更なる減員」の検討は織り込み済みという見方もありますし、主導層もそれを積極的に否定するわけではありません。ただ、特段何をしなくても、「着実に」減員という結果が出ている事実が、この問題への関心という意味で、会内世論のムードを変えてきました。

     しかし、問題は弁護士会が「特段何もしなくても」というところにあります。当ブログのコメント欄にもありましたが、これを「自然減」と表現する人が会内にいます。しかし、こだわるべきは、その原因そのものにあります。この減員は、いうまでもなく、受験者減によって実現しているからです。前記決議時点で踏まえた2015年実績で、8016人いた司法試験受験者は、2018年には約2800人減の5238人になっています。

     この状況に対して、「改革」推進論から遠い人から聞かれる、前記議論不要論とは、要は結果として志望者減という現象が、既に経済的に飽和状態にある弁護士人口の適正人数を、いわば否応なくあぶり出す、という考えた基づくものです。この考え方に立てば、前記会内から出ているような、「更なる減員」方向を打ち出せば、それが業界のマイナスイメージとして伝わり、志望者減を加速化させるだけということになります。さらには、これも当ブログのコメント欄にもありましたが、減員によって飽和解消を模索するより、むしろ業界離脱(リタイヤ、廃業)が模索される方がより現実的という話もあります。

     何を言いたいのかは理解できますし、現職の弁護士という立ち位置からみると、「現実的」ということになるのかもしれません。しかし、目を離してみれば、これは恐ろしく不健全な状況を前提にするものといわなければなりません。この状況にも、「淘汰」という言葉を当てはめる人がいるかもしれませんが、これはおよそ「改革」推進論者が想定してきた淘汰の形ではありません。いうまでもなく、良質化を引き出すように「改革」が描いた「競争」がもたらしたものではなく、志望者が法曹界を見離すことによってもたらされたものだからです。

     経済的に妙味のないところに人が集まらず、飽和が解消されるという道は、人材の確保という意味では最悪のシナリオであり、この間の「改革」の無意味性を明らかにしたということしか意味がありません。あえていえば、かつてのように優秀な志望者がこの世界を目指すことが、その先にあるとすれば、飽和状態が解消され、弁護士人口と需要の関係が、再び資格としての経済的妙味が生まれるまでになり、志望者がそこに「価値」を見出すのを待たなければならないことになります。

     しかも、質ということを利用者の観点からみれば、この間は、決して楽観視できる状況ではありません。受験者数と合格者数が減りつつ、合格率が徐々に上昇しているという現象が生まれています。既に質の確保よりも、なんとか合格者を確保したい、という「改革」側の意向が反映しているのではないかとの見方もあります。それこそ生存がかかっている弁護士の立ち位置ではなく、利用者、社会の側から見て、この状態が続く「改革」に何か良いことがあるのかということを問わなければなりません(「伝わっていない司法試験『選抜機能』の危機」)。

     こうみてくると、今、日弁連主導層が一体、どうしたいのかは、ますます分からなくなります。依然として「需要まだまだ」論を掲げ、増員基調の「改革」路線を受け継ぐ一方で、前記不健全な「自然減」への危機感は感じない。そして、その何もしていない減員をなにやら決議の目標達成とすり替えるようなニュアンスまであり、会内の早急な更なる減員論に応えるわけでもなく、かといって今後何ができるという見通しを示すわけでもない。「自然減」のなりゆきを静観するしかないような。そして、多くの会員の本音はおそらく、弁護士の経済的魅力はこのまま回復せず、当然志望者獲得の法曹養成制度見直しの効果も限定的なまま終わり、ずるずると業界は「不健全」な方向で進むと思っている――。

     業界のなかで「現実論」として言われることそのものが、もはや「改革」と業界の末期的な状況を示しているような気持ちなってきます。


    今、必要とされる弁護士についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/4806

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    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
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    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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